「労働映画が表象する感性の歴史へ」
『日本労働映画の百年』(全労済協会)
足尾銅山争議を実写した映画など初期の労働争議についての映画は、運動性の迫力を表象するモードを持ち、観客もその迫力への驚きを受けとめていた。そうした見世物的な感情の拡散ぶりは、労働組合や政党の結成と共に軽視され、見る人の意識と感覚を政党や組合のメッセージ(物語)を教えこむ啓蒙のモードが主流のものとなっていく。しかし、啓蒙の表象モードに統合されきらない表象と受容のモードが労働映画にも存在しつづけてきたことを実証し、広く労働映画として見つめる発想を提唱しました。