「台湾の「拼音論争」とアイデンティティ問題―国際化と主体性の狭間で―」
早稲田大学アジア太平洋研究センター『アジア太平洋討究』
第20号
本論文では、1990年代末から本格化した「拼音(ピンイン)論争」について、論争発生の経緯とその展開および結末について論じた。共産党による「国際的」な漢語拼音か、「主体性」を重視した台湾独自の通用拼音の採用かで争われた拼音論争は、二度の政権交代に伴う変転の末に漢語拼音の勝利に終わったが、同論争は結果的に拼音を通じて台湾の抱える複雑なアイデンティティ問題が表出した一事例であったことを論じた。