本研究は,中国における日本と台湾の食品関連産業の提携関係がもたらすメリットとデメリット,そして提携関係の長期的安定性および中国の政治的リスクの問題についてアンケート調査の結果から分析した.本研究の主な分析結果は以下の5点である.第一に,本研究の調査対象である日本食品関連企業が中国に進出する際に最も重視した要因は「現地の製品需要が旺盛又は今後の需要が見込まれる」ことであり,次に「良質で安価な労働力が確保できる」ことであった.第二に,日本食品関連企業が中国に進出する際に台湾企業と資本提携した理由としては「言語や文化が現地に近い」,「提携企業が持つ現地ネットワークを利用したい」,「提携先とは過去に協力経験があった」,「提携先には優秀な人材がいるから」,「現地における政治的リスクを分散したい」がある.第三に,日本・台湾企業の提携関係について,日本企業は運営状況と目標の達成率について不満があるものの,中国市場における提携先との競合は現時点では発生しておらず,仮に競争関係が発生しても提携関係を縮小する予定はない.第四に,日本企業が中国に投資する際には「外資企業政策」,「経済・産業政策」,「貿易政策」,「地域開発政策」に関連した政治的リスクを重視しているが,前三者の政治的リスクは台湾企業との提携関係によってやや低下したと評価されている.第五に,中台経済協力枠組協定(ECFA)については,日本側はプラスの評価をしていないが,台湾側はプラスの影響を予想している.