本研究では,組織構造論の視点を参考に,様々な立場の間に立つ管理職が,保育の外から持ち込まれた「特別支援教育体制整備」の枠組みをどのように理解し,また幼児教育の実情に応じてどのような調整を行っているのかを明らかにすることを目的とした。結果,大人が主導する形で教育を行うこと,つまり指導・管理的なPDCAサイクルが前提となっているツールや活動のいくつかで,幼児の興味関心に寄り添いながら子どもを支えようとする幼児教育の前提との間で不調和が生じており,多忙な職務環境が相まって活用や実施の意義を見出しにくいまま実践が進められていることが明らかとなった。一方で,そうした事態に気づいている管理職によっては,「葛藤を抱えたまま」だけではなく,幼児教育の視点を強調したり,両領域の良さを交えて実践の場を支えるなど,異なる対処方略を選択している可能性が示唆された。(真鍋健・広瀨由紀・守巧)【査読有】