本稿は、敬語を対象項目としてリキャストの有効性を検証したタスクの試みを報告する。調査協力者は,ポーランド語母語の中級・中上級学習者15名である。協力者にはツアーガイドのロールプレイタスクをしてもらい,不正確な敬語の発話にはリキャストで対応した。リキャストされた項目のタスク継続中のプライミング産出,および訂正理由の正確な理解を示す回想インタビューコメントを,リキャストの有効性の指標とした。
その結果,尊敬語の「いらっしゃる」のような特定形は,協力者全員からプライミング産出があり,先行するリキャストには訂正理由の正確な理解が確認できたものもあった。一方で,「思われますか」のような「(ら)れる」尊敬語に関しては,プライミング産出はみられず,訂正理由の正確な理解も確認できなかった。