本稿では、文化庁文化審議会が2007年に「敬語の指針」において発表した「謙譲語の2分類」が、どのように日本語初級教科書に反映されているかを検討した。併せて、敬意の度合いが軽いとされる「(ら)れる尊敬語」が、教科書の会話例において「お(ご)なる尊敬語」と使い分けられているかを見た。分析対象は、4種類の日本語初級教科書シリーズである。その結果、謙譲語の2分類については、すべての初級教科書で異なるものとして扱われ、3種では明示的に区別が説明されていた。「(ら)れる尊敬語」は、3種では指導項目であったが、会話例における場面、発話相手・話題の人物等の関係性が敬意の度合いを考慮しているかどうかは、教科書によって異なることが明らかになった。