本研究は,対人ストレス反応を起点とする身近な他者への相談過程を検討するため,対人ストレス反応が身近な他者への相談過程を促進する「対人ストレス対処過程としての身近な他者への相談」をモデル化し,同モデルが異なる対人ストレッサー間に共通するかについて多母集団同時分析を用いた検討を行っ た。その結果,対人ストレス対処過程としての身近な他者への相談は,対人ストレッサーの種類に関わらず「悲しみ・不安」に基づく相談は効果があるが,
「怒り・嫌悪」に基づく相談は効果がない可能性が示唆され た。怒りの鎮静化には経験の内省を要するため(e.g.遠藤, 2009),発散目的の相談は効果がなかったと考えられる。モデルの妥当性は更なる検討を要する。