辻山 ゆき子(共立女子大学)
小林 淳子(お茶の水女子大学)
在日コリアンなど旧植民地出身者への日本の同化主義は、その民族性をみとめず、「国語」と日本文化、植民地時代はさらに天皇への忠誠を強制するものであった。現在も、多くの人が「創氏改名」に由来する「通名(日本名)」を使用して日常生活をおくり、帰化の際にはこの「通名(日本名)」を正式な名前とすることが多い。これは日本民族への同化である。いっぽうフランスの同化主義は、フランス革命以来の自由・平等・博愛という普遍的文明に根ざしているといわれる。しかし、フランスにおいても植民地出身者の伝統的慣習は、文明から遅れ、フランス人権宣言の精神に反したものとして、認められてこなかった。旧植民地出身フランス人にたいして現在のフランスで行われているのは、共和主義にもとづく市民社会への同化である。日本とはまたべつの同化の論理によって、かれらの言語、文化などは尊重されていない。
本報告では、日本とフランスの旧植民地に出自をもつ第二世代の女性のアイデンティティの比較をとおして、両国の同化主義のありかたの相違点と共通点がアイデンティティにどのような影響を与えているのかを、ジェンダーの視点も交えて考察する。具体的には、小林の2006~2007年に行った在日コリアン2世の女性の聞き取り調査と資料、辻山の在仏マグレブ第2世代女性の文献によるアイデンティティ調査を、シティズンシップ、民族、ジェンダーを軸に、平等と相違の主張のバランスに注目しながら、比較する。