ケベック・ナショナリズムの歴史を概観し、さらにフランスのナショナリズムと対比しながら、その特徴を考える。「静かな革命」までケベックでは「カトリック系フランスの保守主義」をフランス系カナダ人のアイデンティティの基礎としてきた。これは、共和主義に基づくフランスの国民=民族(nation)観とはまったく無関係である。ケベックの場合は、「静かな革命」後、近代化、世俗化が進んだが、フランス語の防衛、カナダ建国の二大民族の特別な地位の強調が、ただ目立っており、共和主義のような特別の価値観への同化はみられない。ケベック・ナショナリズムの特徴は防衛的であり、フランス語を土台としながら、フランスとは異なるナショナリズムを発展させてきている。