フランスにおける旧植民地出身の移民の社会統合についての社会学的な研究である。1980年代以降、郊外の大規模団地に住む労働者階級の住民と警察との関係は対立的になった。特に若者たちと警察の対立は、リヨンやパリ、その他の都市部で暴動にまで発展した。しかし一方で1983年に旧植民地出身の移民の第二世代の若者によって行われた平等を求めるデモ「平等と反人種差別の行進」は、極右を除くフランス社会の広範な支持を集めて、大きな反響を生んだ。しかし、それから40年経った現在も、フランス社会は旧植民市出身者の求めた平等と反人種差別の希望の実現に成功しておらず、社会的排除は悪化し、格差は拡大している。1983年に「平等と反人種差別の行進」を可能にした移民第二世代の持っていた社会的資源がその40年後には失われている。本稿では、こうした動きについて考察する。フランスにおけるその後40年間の社会的排除の悪化に焦点を当てるだけでなく、1983年の「行進」を成功に導いたものが、40年の間に失われたことを浮き彫りにする。