H.D.の初期のイマジズム詩集『Sea Garden』において殻を破れずにいる「種子」のイメージ、つまり自己の内側へ向かう『閉じられた』イメージは、後期長編詩『Trilogy』において美しい「花」へと変容し、無限の宇宙、および外側に向かって大きく開かれたイメージへ発展する.一粒の種子から無限に広がりつづける花のイメージは、宇宙の調和とエネルギーを凝縮した小宇宙であると同時に、詩的創造力を開花させた詩人自身の内面をも映し出している.『Sea Garden』の内的探求に見られた内側へ向かうエネルギーは、自己完結した閉鎖的空間ではなく、『Trilogy』においてより大きなビジョンへ内側から突き抜けていくためのステップであったといえるだろう.