本報告では、2010年に施行されたインドの「無償義務教育に関する子どもの権利法」(The RIght of Children to Free and Compulsory Education Act)により開始された私立学校での社会的弱者層や貧困層の定員割り当て(25%以上quota制)の実施状況を検討し、その問題点を指摘した。①各州における私立学校無償枠の充足状況に遅速が生じているだけではなく、デリー首都圏以外は全体的に低調である、②私立学校の反発と抵抗が強く、各地で訴訟が起きていて、少数民族の文化維持や宗教教育を特色としている私立学校の例外措置が司法府から認められるようになっている、③無認可私立学校への入学に歯止めがかからないといった状況を取り上げ、その原因の一つに連邦政府の州政府への予算配分の執行が遅れ、RTE法に基づく政策実施が各地で停滞していることを明らかにした。また、同様の理由で公立学校の教育の質向上のための政策実施も進まず、これも③の原因の一つとして説明、補足した。