本論文は、21世紀のアジアにおける就学前教育改革が、私立の競争を沈静化し教育格差の縮減を目的に、バウチャー制を掲げた政策で推進されていることを、台湾を事例に挙げて明らかにしている。同国では、幼稚園と保育所を統合し、「幼児教育券」(世帯の所得に応じたバウチャー)を発行して、すべての子どもに就学前教育を保障するしくみを整えつつある。これは、2012年に成立した日本の「子ども・子育て支援法」に先行するもので、バウチャー制に参加できる条件ないし基準を設け、劣悪な無認可の学校/施設を排除、幼児教育/保育の一定以上の質を担保する効果も期待されている。