本論文の目的は、アメリカ合衆国におけるホームスクーリングを実施する家庭の教育費負担の軽減策、いわゆる公的経済支援の一つとしての「所得控除」を取り上げ、その導入の背景と論拠を検討することである。2014年現在で、ホームスクーリングにかかる教育費用について、連邦所得税の所得控除は認められていないが、ミネソタ、イリノイ、ルイジアナ、インディアナ州は州所得控除を導入している。これらの4州が控除を可能としている根拠は、州憲法の政教分離規定の文言と州最高裁判所の同規定の解釈であることを明らかにし、各州の控除の対象となる教育費目と平均控除額を整理した。さらに、全米で州の教育課程を遵守することが、ホームスクーリングに公的経済支援を認める資格条件となりつつある政策動向を指摘した。