近年、人と環境との相互作用の重要性について、様々な学問分野でたくさんの知見が示されるようになってきた。乳児が自ら動くことによって他者や周囲の環境を認知するということが発達心理学研究では明らかにされてきているし 、人工知能研究でも環境との相互作用を通して学習するロボットの開発が行われており、脳・身体・環境の相互作用から認知を説明する身体性認知科学という立場もある。その中では、「身体によって思考が可能になる」とも言われる 。
ところで、音楽活動において「創造性」の存在を疑う人は居ないであろう。音楽づくりや作曲はいうに及ばず、演奏、鑑賞といった活動の中にも創造性は存在している。おそらく誰もが音楽活動の中に創造性を認めてはいるものの、「創造性とは何か」という問いに共通の概念で答えることは難しい。
とはいえ、音とモノと身体のかかわりをみてみると、音楽するときに働く創造性というものが見え隠れしているようにも思う。実際の事例からこれらをたどろうという趣旨でパネルディスカッションを行った。