幼児教育と小学校教育との対等な連携の必要性が言及されて久しい。日本でも,音楽を視点にした幼保小接続に関する様々な研究が行われてきた。しかし,その多くは幼児教育と小学校教育どちらの教育段階でも実践可能な教材や教育方法を研究したものである。それと同時に,幼児教育の日常の中にある学び,あるいは小学校でのごく普通の授業の学びの中にどのような連続性があるのかを問うことも重要であろう。音楽を視点に発達段階や教育課程を超えて共通するような資質・能力を捉えることも幼保小の接続に必要な視点ではないだろうか。欲発表は,小学校1年生の器楽活動を事例に,幼児教育と小学校教育における学びの連続性について検討したものである。小学校現場の事例からは,小学校入学段階でほとんどの子ども達が授業で取り上げた楽器の一般的な奏法について認識している。それにも関わらず,多様な経験を重ねたうえで,技術的な指導が行われた。実際に楽曲を演奏する前に,楽器と音と自己との関係性の認識,そして,楽器を通しての他者とのかかわりという視点から,学びほぐしが行われていることが明らかとなった。