共立女子大学国際文化学部国際文化学科の専門科目「日本文化概論」(1994年~1995年)、「日本の文学」(1996年~2001年)、現在は「日本の映像と文学」「映像文化論II」において実践している。当初の「日本文化概論」においては、日本文化の有りようを視聴覚にうったえて学生に示すことと、アメリカ・ヨーロッパ・アジア等の諸外国と日本の文化との相違あるいは類似点を明確にするために、主に映画を活用していたのであるが、当該科目の廃止により、「日本の文学」にこの方法を踏襲させ、他の「特講」や「講読」の授業とは一線を画した。この授業では、原作の文学作品と映画化された作品を比較検討し、映画化作品から文学にアプローチさせる方法をとった。また、映画そのものの鑑賞力を高めさせることに腐心し、外国映画も積極的に取り入れた。この授業の経験を生かして、より充実した内容にするために設置したのが「日本の映像と文学」という新科目である。また情報系の科目「映像文化論II」も受け持つことになり、こちらは映画そのものの性質を説明し、特徴のある作品の紹介を主にしている。ビデオやDVDの活用は今ではまったく珍しいものではないが、映画を授業に取り入れることは、時間的な長さの問題や視聴覚機器使用の問題などがあり、傍目に見るほど簡単なものではない。留意すべき点は、決して流しっぱなし・見せっぱなしにしないことで、上映する部分や時間に配慮して、その場面に適した疑問やテーマを与えて即時に答えや意見・感想を書かせることである。漫然と画面を見ているのではなく、興味や課題を持って画面を追う態度をいかに学生に身につけさせるかが鍵といえよう。 今までに取り上げてきた主な作品は以下の通りである(〈 〉内は映画題名)。 川端康成『雪国』・『伊豆の踊子』、芥川龍之介『藪の中』〈『羅生門』〉、三島由紀夫『金閣寺』〈『炎上』〉、樋口一葉『大つごもり』〈『にごりえ』〉、夏目漱石『それから』、山本周五郎『季節のない町』〈『どですかでん』〉、松本清張『砂の器』、野坂昭如『火垂の墓』など。ほかにアニメ『耳をすませば』、テレビドラマ『東京ラブストーリー』など漫画原作のものもある。