先に書いた「『夢十夜』試論 ―〈過去〉の呼び声―」の続きを書く前に、まず「第一夜」を詳細に読み直すことを目的として書いたもの。「第一夜」は、死んでいく女が傍にいる男に、自分の死んだあとの処置を細かく指示したあと「百年待っていてください。必ず会いに来ますから」と言い残す。男は女に言われたとおりに墓を作り、墓標の傍で待っている。最後に、もう来ないのかと疑ったときに墓から百合の花が生えてきて、その花が女の生まれ変わりであると分かる、という話である。漱石の恋愛観・人間観を探る上でも貴重な作品であるので、できる限り詳細な分析を試みた。 21頁~29頁