夏目漱石の青年時代の伝記に関する考察。明治27年は、漱石が大学を卒業し、大学院に籍を置きながら、高等師範学校の嘱託講師を勤めていた頃である。有名な事実としては、この年、入居していた大学の寄宿舎を飛び出し、小石川の尼寺に下宿したり、精神の懊悩の耐え切れず、年末に鎌倉円覚寺に参禅したことがある。しかし小論では、当時の漱石が苦闘していた「英文学」や「英語教育」に焦点を当て、高等師範学校や、翌28年に赴任した松山中学での教師ぶりについても考察した。注目したのは、当時の日本における英文学研究や英語教育がどのようなものであったのか、である。 149頁~180頁