「奇妙な仕事」は、大江のごく初期の短編である(1957年発表)。代表作「死者の奢り」と同じく、大学生の奇妙なアルバイトを描いたものだが、「奇妙な仕事」の場合、〈犬殺し〉という、当時にあっても異様な仕事が描かれている。犬を棒で殴り殺し、皮を剥ぐという野蛮な残虐性が強調され、金のためにそれに加担する学生たちの心理や行動は、権力や圧制者に心ならずも加担して弱者を苦しめている状態に似通ったものとして描かれる。むろん象徴的な描き方に過ぎないが、そこに〈殺し〉の生々しさを付与する「犬殺し」という仕事を大江がどのように描こうとしたのかを考察した。 165頁~173頁