学術論文

基本情報

氏名 橋川 俊樹
氏名(カナ) ハシカワ トシキ
氏名(英語) Hashikawa Toshiki
所属 大学 国際
職名 教授
researchmap研究者コード
researchmap機関

発行又は発表の年月

1987/03

学術論文名

「春の鳥」 ―「白痴教育」との接点―

単著・共著の別

単著

発行雑誌等又は発表学会等の名称

「東京成徳国文」第10号(東京成徳短期大学国文科発行)

開始ページ

終了ページ

概要

「春の鳥」は、国木田独歩の短編小説である。明治37年に発表されたが、素材となっているのは明治26年に独歩が大分県佐伯にいたころ、一人の「白痴」の少年の教育を依頼され挫折した経験である。小論で着目したのは、独歩が編集長を任されていた新聞「民声新報」の明治34年5月3日の記事である。そこには石井亮一による「孤児教育」「白痴教育」の施設「滝乃川学園」の紹介がされていた。独歩がこの記事を読んでいることに間違いはなく、明治20年代には「白痴教育」という言葉すら存在しなかったと考えられることから、この言葉を作中に用いた独歩には「白痴教育」、すなわち石井亮一の事業に対する知識や認識があったと判断し、石井の紹介記事やその著作などを用いて、「春の鳥」の六蔵がどのように造型されたかを検討した。独歩は佐伯時代に先の白痴児童の教育記録「可憐児」を残しており、これとの比較も重要なポイントである。「春の鳥」は、従来は独歩の自然志向・少年崇拝の問題など詩的な側面ばかりが強調されてきたが、独歩の白痴・少年を見つめる視線には「白痴教育」の知識や認識があったことが、作品を大きく左右していることを検証した。 1頁~14 頁