夏目漱石の小説『それから』について、主人公・長井代助の性格や思想の分析を中心に論じた。代助は、自ら信じるようになった独自の個人主義的・快楽主義的な思想を守り、周囲の家族や社会の影響から「自分」をガードしている。普通に「仕事」をして暮らしている他人より、「遊んで」いる自分のほうが「高尚」だと考える。しかし、周囲や他人を受け付けず、自分ひとりになっている代助には生気や活力が不足してくる。「恋愛」は、そんな代助に唯一、生きる力・行動する力を与えてくれるものである。しかし、彼の「恋愛」の対象は友達の奥さんになっている女性だった。代助は結局、「自然の愛」をすべてに優先させ、社会的に破滅し、相手とも永遠に会えなくなるが、精神的には「恋愛」をかちえて救われる、というふうに結末を解釈した。 頁~ 頁