音数律という視点から日本を含めたアジアの歌を、それぞれの地域で研究を進める研究者の共著によって捉え返すという試みの一部を担当した。遠藤のテーマは「アジア辺境国家の七五調―ペー族の五・七音音数律を遡る」である。ペー族の人々に内在化されている五七音音数律は、漢字によるペー語表記(白文)によって記される本子曲という芸謡や明代の詞形式と一致するものであること、その源泉はかつてペー族先民が形成していた南詔期の白文のあり方にさかのぼることを根拠として、五七音音数律は南詔国のような中華の辺境国家支配層が、漢字によって自民族語を表記するあり方の中で漢詩につらなる民族の歌を創作するなかで生成したものであることを述べた。(p131~154)