中国少数民族イ族の葬送儀礼で唱えられる招魂経、指路経を、色という視点から分析した。招魂経は生者の魂を死者の世界から呼び戻す儀礼、指路経は死者の魂を死者の世界へ送る儀礼であるが、ともにシャーマンが地名を列挙する形で異界である死者の世界と往この世を往復することによって果たされる。指路経はまず死者の氏族の歴史をたどり、祖先の地まで魂を連れて行き、その後天上に向けて上昇していくが、このとき、それまで地名によって示されていた道程は色によって示されることになる。そしてその色による道程は、創世神話に現れる天から人間のもととなる種が落下する際の色と同じであることから、死者の魂は歴史を遡り人類の起源、さらに世界の起源にまで到達するという認識があることを論じた。(p1~17)