「久米歌『宇陀の高城に』歌謡に見る豊饒予祝の原理」
「古代研究」第28号
久米歌「宇陀の高城に」歌謡は、歌い手である男が前妻を退け後妻をかわいがるという点に笑いを誘う要素があり、その笑いの呪力が戦闘力を高めると説明されてきた。同様の主題は朝鮮民謡にも存するのであるが、それは豊饒予祝の祭祀演劇のセリフとも通じており、そこには前妻に象徴される冬を退け、後妻に象徴される春や豊饒を取り込むという予祝原理が認められる。本稿はこのような豊饒予祝の原理から、「宇陀の高城に」歌謡を読んだものである。(p20~32)