「歌垣歌における独り寝の嘆き」
「鎌倉女子大学紀要」第1号
万葉恋歌の顕著な特徴のひとつに、恋の嘆きへの傾斜がある。従来この傾向は、歌い手個人によって表現するに足る抒情としてそれが選択されたためと考えられてきた。本稿は、風土記記載の歌垣歌(2・3)がこの種の嘆きの歌であること、さらに中国少数民族ミャオ族の歌掛け歌にも「単身歌(独り身を嘆く歌)」と分類される嘆きが歌われていることに注目し、表現としては嘆きの歌が、実際には歌垣などの場で公開され、さまざまな機能をもって歌われており、その延長上に万葉和歌があるのではないかと述べた。(p1~10)