兄妹が結婚して、人類あるいは共同体の始祖になるという兄妹始祖神話が、中国南部を中心としてアジア各地に広がっている。日本にも古典神話等にその痕跡を認めることができるが、よりさかんに語られてきたのは、兄妹が結婚し、それを恥じて死に、彼らをまつるのが道祖神であるという形の道祖神伝承である。このような神話の変容をたんに始祖神話の矮小化と捉えるのではなく、それを「祭る」という形で語る人々の心のありよう、つまり自らが兄妹の結婚により生まれたのだとする心の負い目という視点から考察したものである。(p1~13)