『源氏物語』の中では様々な「物」の授受が行われ、物語が展開してゆくが、特に「帚木」巻の「撫子」の折り枝に着目して論を展開した。従来、「撫子」は「夕顔の子」の喩として解釈されているが、その理解が頭の中将主体(語り)に基づいたものであることを指摘し、夕顔の真意が何であったのか考察した。頭の中将が夕顔の真意に気づかなかったことが、彼女の失踪を招いている。たとえば贈答歌であれば、我々読者は答歌から贈歌を読み取りがちであるが、「授/受」の立場で「物」の真意や「言葉」の意味を読むことが必要となってくることを問題提起した。