明石一族の皇位継承権獲得の表現ー『源氏物語』明石巻における催馬楽「伊勢海」を中心にー
伊井春樹編『古代中世文学研究論集』第三集(和泉書院)
明石一族の皇位継承権獲得の表現を催馬楽「伊勢海」引用を中心に考察した。催馬楽「伊勢海」は、明石巻以後も物語の底流にあり、それは、明石姫君が皇子を出産するまで続いている。「伊勢」が「常世の波がしき寄せる」海であったことと重ねれば、明石の海にまで「神仙界」の海が呼び込まれたことになる。そのことで没落貴族の復権というかなり困難な出来事を必然化するための一方法であったと考えられる。