『源氏物語』松風巻〈大堰川のわたり〉考
大阪大学古代中世文学研究会『詞林』
明石の君は上京の際、光源氏が造営した二条東院ではなく「大堰川のわたり」にまずはその住居をさだめた。その理由を中心に探った。「大堰川」は「天の川」に見立てた形で描かれており、「大堰川のわたり」は「神仙世界」として造型されていた。それは、その後、明石の君が国母の母となる資質、つまり皇統に連なる一族としての資質を獲得するための中継地点として必要な場であったと考えられる。