光源氏の須磨流離と尸解仙ー聖徳太子引用による物語生成ー
大阪大学古代中世文学研究会『詞林』
須磨流離における光源氏の姿を、尸解仙引用から考察した。そこには登仙した聖徳太子の姿も重層的に重ねられていた。須磨巻と明石巻の「衣」による二度の登仙という尸解引用が、光源氏の復権の論理として働いており、以後京に帰還した光源氏がより高い次元で栄華を手中にしてゆくのは、物語の水面化にこのような深層世界が孕まれていたことに支えられてることを明らかにした。