物語が〈うた〉を内包することで一体どのような表現を可能にしたのか、源氏物語を中心に考察した。第一章では催馬楽を、また催馬楽の師伝相承に源氏出身者が多いことから、第三章ではなぜ〈源氏〉物語なのか、ということを探ってみた。第二章では、和歌の詞書に記される〈物〉の贈与に注目し、その表現性を「瓜」を中心に見たきた。「歌ことば」が凝縮された形として「物ことば」があることを明らかにし、その重要性を説いた。第四章では源氏物語の独詠歌を「語り」を視野に入れて考察した。第五章では『今物語』の源氏物語享受を中心にその表現を見てきた。「引用」の曖昧さが「今」という当座に物語を生成する様を読み解いた。