「花宴」巻「やはらかに寝る夜はなくて」考
近畿大学日本語日本文学会『シュンポシオン』
源氏物語は、催馬楽を他の王朝物語に抜きん出て引用している。これまでもいくつかの先行研究はあるものの、研究対象はまだ特定の人物や巻に集中している。本稿では、「花宴」巻において光源氏によって謡われた催馬楽「貫河」引用の機能を考察した。従来、正妻葵上への「あてこすり」と読まれてきた部分であるが、さらに藤壺、紫上、朧月夜等の女君たちをめぐる光源氏の性愛的かつ複雑多様な情念がこめられており、この歌に光源氏の複雑な感情が隠匿されていることを明らかにした。