これまでに,視線が一致したTV会議システムを利用した遠隔ディベート学習の研究事例はない。本研究では,視線一致型および視線が合わない従来型(両者画面サイズ15と30インチを用意)TV会議システムを利用した遠隔ディベート学習と,対面によるディベート学習を実施し,5つの学習環境の比較を行なった。各授業では質問紙調査と,ディベートにおける発言数および有効発言数を取得した。質問紙調査結果を因子分析し,5つの学習行動因子と主観学習評価を得た。ディベート学習における,発言数と有効発言数を客観学習評価と定め,分散分析および多重比較を実施した。各学習行動因子と客観・主観学習評価より逐次型因果モデルを仮定し,共分散構造分析を行なった。結果,有効発言数は対面と視線一致型15・30インチの差は無く,従来型15・30インチは前者に比べて低下した。対面と視線一致型15・30インチでは「バーバルコミュニケーション」が最も学習効果を上げる学習行動である。従来型15・30インチは「バーバルコミュニケーション」以前に「弛緩・飽き」による学習効果の低下が顕著である。従来型15・30インチの学習効果の低下を抑制するには,画面サイズを大きくすることと,「ノンバーバルコミュニケーション」や「視線固執」行動を引き出す方策が必要である。
本人担当部分:全文本人が執筆
共著者:谷田貝雅典 永岡慶三 坂井滋和 安田孝美