中国語は他の外国語に比べ,発音の習得に時間がかかると言われている。入門期の学習者に発音を指導する際には,声調,母音,子音と音節を構成する要素ごとに導入するのが一般的であるが,この方法では,一通りの導入がすむまで,学習者は子音,母音,声調を自由に組み合わせて発音してみることが難しい上,習得しやすい音としにくい音が混在した形で指導がなされるため,学習効率や学習者のモチベーションを保つ上で問題がある。そこで私は担当する初級の中国語科目において,声調,母音,子音それぞれを習得が容易なものと困難なものとに分類し,まずやさしい声調,母音,子音を指導し,その後,難しい声調,母音,子音を指導するという方法を実施した。またそれぞれの音を導入する際には,専門的な説明はなるべく少なくし,日本語の言語生活から応用できる方法を探し出して指導するようにした。こうした措置の結果,学習者は学習初期の段階から,スムースに中国語の発音に慣れていくことが可能となり,達成感を持続しながら学習に臨めるようになった。