「大体今日の日本を知るために日本の歴史を研究するには……応仁の乱以後の歴史を知っておったらそれでたくさんです」。東洋史家・内藤湖南が一九二一年の講演において、日本史上における戦国時代の画期性を端的に表現した、著名な一節です(「応仁の乱に就て」)。ちょうど一〇〇年後の今日においても戦国時代に対する社会的な関心は高く、書籍や雑誌、テレビ番組といった従来のメディアに加えて、近年ではインターネットを通じた情報発信も日々さかんです。それらのなかには通俗的なイメージを覆す新説も珍しくありませんが、情報量が膨大なだけに、いわば玉石混淆な側面も否めません。情報の当否を見極めたい、あるいはより積極的にみずから情報を発信したい、そう考える方もいらっしゃるでしょう。では、そうして歴史研究の入口に立ったとき、まずはなにから始めればよいのでしょうか。
本特集は、戦国時代を理解するうえでの切り口となる代表的な論点ごとに、その研究を始めるにあたっての手引きとなる論考を集めました。各論考では、基本的な先行研究の紹介、議論に不可欠となる史料の探し方、そして史料を読む面白さ、などを語ってもらっています。いずれも、卒業論文で戦国時代をテーマとしたい、と考えている大学生であれば、ぜひとも押さえておきたい内容です。本特集が導きの糸となって、戦国時代の歴史研究にみずから取り組む方が現れることを願っています。(編集委員会)