1871年普仏戦争後フランスからドイツ帝国に割譲されたアルザス・ロレーヌ(エルザス・ロートリンゲン)における初等教育政策を対象とする研究である。まずはじめにフランス・ナショナリズムにおけるアルザス・ロレーヌ(の学校)のイメージを跡付け、さらにそれと奇妙に符合するドイツ第二帝政期の学校教育の研究史にふれた後、併合初期のいわゆる文化闘争期からその沈静化にかけてのドイツ教育当局の政策を政教関係を中心に分析した。続いて学校教育における言語の問題、ドイツ・ナショナリズムの涵養、さらに現場の教員、最後に第1次世界大戦における民衆学校について考察を行った。その結果、冒頭で取り上げたこれまでのイメージとは異なる、よりダイナミックな学校教育の存在が明らかとなった。241ページ