文学・思想・映像の三領域から20世紀という時代の表象とその内実を探る論文集。
全302頁
編者:関礼子、原仁司
共著者:井口時男、内藤千珠子、原仁司、篠崎美生子、永野宏志、山崎正純、関礼子、深津謙一郎、紅野謙介
本人担当部分:「喪の失敗―新藤兼人『原爆の子』と戦後/ヒロシマ」(p249~p268)
新藤兼人監督の映画『原爆の子』の分析を通して、ヒロシマを物語化することの(不)可能性を問うた。『原爆の子』の主題は生き残りの罪障感を忘却するところにあり、それは被害者史観という戦後の被爆ナショナリズムに沿うものであったと指摘したうえで、そのために利用された原爆乙女の表象が、「国民」に回収されない残余を顕在化させてしまう点に、ヒロシマをめぐる被爆ナショナリズムを相対化する逆説的な可能性を見出した。