書評 小森陽一著『村上春樹論『海辺のカフカ』を精読する』
『日本文学』55巻12号、日本文学協会
小森陽一著『村上春樹論『海辺のカフカ』を精読する』を書評した。「戦後」における「戦争の記憶」の継承という論点から村上春樹のテキストを再読する本書の試みを概括し、その意義を評価するいっぽうで、著者が依拠する政治的な「正しさ」は、万人に開かれた論理の言葉というより、著者自身の倫理的責任感に基づくものであり、そのことが小説の言葉を殺してしまう危険性をあわせて指摘した。(p60~p61)