口頭発表 亡霊という問題圏―原爆体験/文学の脱領域化
東京大学グローバルCOE「共生のための国際哲学教育研究センター」ワークショップ(東京大学)
林京子の小説は、条理化を拒む死者の死の他者性を、生者に都合良く領有=理解してしまう、つまり、原爆について語ることで、原爆を〈いま・ここ〉から切り離してしまうようなあり方とは違う死者との関係性を模索する。その結果林の小説は、体験の風化という文脈で必ず問題になる体験/非体験の硬直化した分割線や、林自身が拒む「原爆文学」というジャンルへの囲い込みを失効させ、文学による、アクチュアルな戦争批判を可能にしたと指摘した。