書評 柴田勝二著『中上健次と村上春樹 〈脱六〇年代〉的世界のゆくえ』
『日本近代文学』81集、日本近代文学会
柴田勝二『中上健次と村上春樹 〈脱六〇年代〉的世界のゆくえ』を書評した。対照的に見える中上健次と村上春樹の共通性を、いわゆる〈脱六〇年代〉(ポストモダン)の問題に限定せず、むしろ日本近代史の中に通時的に位置づけ、評価しようとする本書の意義を強調しつつ、通時的に問題を接合していくことが、その問題に固有の歴史性を捨象することでもあるというアポリアをあわせて指摘した。(p409~p412)