口頭発表 村上春樹『海辺のカフカ』―1970年のトラウマと「戦後」
日本文学協会近代部会例会(日本文学協会)
語り(騙り)の観点から『海辺のカフカ』を分析した。この小説には、よく似たエピソードが、別の場面や人物によって何度か繰り返されている。こうした〈反復〉に注目するとき、引用されたアジア太平洋戦争の記憶はダミーであり、『海辺のカフカ』が語りつつ隠そうとするものの核心には、『風の歌を聴け』以来、村上春樹のテキストが拘泥し続けてきた〈1970年〉の問題があると指摘した。