エッセイ 『イグアナの娘』から見えてくるもの
『十文字国文』15号、十文字学園女子大学短期大学部国語国文学会
萩尾望都『イグアナの娘』における母娘関係の表象を分析した。『イグアナの娘』の物語は、構造的に見れば、母が解けなかった呪縛を娘が解く形になっており、その限りで、息子が相克の果てに父を超えるファミリーロマンスと同型だが、父子の物語と違い互いの対抗関係が強調されない。そこに、男性中心主義的なジェンダーの枠組みを指摘するいっぽうで、父子関係の歪さを浮き彫りにする批評性を見いだした。(p59~p60)