書評 永井聖剛著『自然主義のレトリック』
『日本文学』57巻9号、日本文学協会
永井聖剛著『自然主義のレトリック』を書評した。本書の意義を、①〈描写〉を素朴な排技巧・排修辞とする通念を退け、花袋の象徴主義と〈描写〉の融合を説得的に説明し得たこと。②〈描写〉を私小説の濫觴として位置づける通念を退け、その複層的な可能性を救出しようとしたことの2点に求め、その文学史書き換えの企てを評価するいっぽうで、身体など〈描写〉に回収されない残余への注意を促した。(p68~p69)