口頭発表 “彼ら”の時代のフォークロア―村上春樹の1970年前後
昭和文学会2008年春季大会(大東文化大学)
村上春樹のテキストを通じて、1970年前後の転換点を捉えようとした。村上の初期作品を特徴づけた、感傷に耽溺することへの禁じ手とアイロニカルな振る舞いは、戦後の思想史に屈折をもたらした「連合赤軍事件」に対する批評として読みうるが、それも『ノルウェイの森』で消失する。その契機を、「アイロニーの消失というアイロニー」を招来した『羊をめぐる冒険』のラストシーンに指摘した。