「暗黒」を明視する―永井荷風『地獄の花』と見ることの歴史性
『明治大学日本文学』28号、明治大学日本文学研究会
身体の諸感覚、とりわけ視覚の変容という観点から、明治30年代文学の歴史性を探った。永井荷風『地獄の花』の主題は、「暗黒」の比喩で語られる性を可視化するところにあるが、この物語の論理において、その行為は客観的な視覚再現と同義である。こうした過度の視覚偏重が、明治40年代以降に定着し、現在まで引き継がれる身体の諸感覚とどのように異なり、また同じかについて検討した。(p9~p16)