『門』―「山の手の奥」の心象地理
『明治大学日本文学』26号、明治大学日本文学研究会
夏目漱石『門』において世評の高い「日常」のリアリティを心象地理の観点から読み解いた。『門』の時間を語りに沿って構成し直すと、主人公夫婦がひっそり住まう山の手の奥は、彼らが犯した過去の罪よりも、石原千秋のいう「次男坊」たちと、彼らが目指す植民地によってその輪郭を明らかにする空間である。『門』の「日常」が、家父長制や帝国主義の交点から立ち上がる過程を明らかにした。(p38~p46)