「第51回表現学会全国大会 〈シンポジウム〉表現における視点」における基調報告を論文化したもの。近代文学研究において、現在、「視点」という語に代わり、「焦点化」という観点が用いられていること、「焦点化」は、どこから語られるかという問題よりも、むしろ、どの視点が選ばれた結果、情報がどのように語られるか、という問題に力点を移すものであったこと、そして、このような「焦点化」という観点が有効なのは、「アイロニー」に代表されるような、視点を変えて語られることで生じる「情報量の落差」が解釈上の問題になる場合であるということを、芥川龍之介「トロッコ」を具体例に概括した。