「我らの時代のフォークロア―高度資本主義前史」論―「過渡期の十年間」における「historie(物語=歴史)」の困難
『共立女子大学文芸学部紀要』第60集、共立女子大学文芸学部
「historie(物語=歴史)」という観点から、「過渡期の十年間」(加藤典洋)において村上春樹文学が直面した困難について考察したもの。80年代後半以降の村上春樹は、「historie(物語=歴史)」を主題の前面に打ち出すが、「我らの時代のフォークロア」に代表されるこの時期の彼の「historie(物語=歴史)」は、“いま・こうある”現在の〈他者〉(潜在的な歴史の複数性)に対して想像力を閉ざしており、その結果、彼が批判する「高度資本主義」の現在を消極的に追認してしまう逆説について指摘した。