「八月九日」の〈亡霊〉―林京子『ギヤマン ビードロ』論
『共立女子大学文芸学部紀要』第57集、共立女子大学文芸学部
戦後65年を経た現在、原爆の記憶の風化や体験の継承の必要性が叫ばれる中で、林京子の連作短編小説集『ギヤマン ビードロ』の可能性を再評価したもの。ジャック・デリダの〈亡霊〉概念を援用することで、『ギヤマン ビードロ』における西田という登場人物の役割に新しい光を当て、それが体験/非体験という境界線を脱構築させ、原爆の当事者という概念の練り直しと、記憶の分有のあり方を示していると結論した。(p65-p77)